(
1)
子曰
ハク、
里ハ仁ヲ爲スレ美
ト。
擇ンデ不
ンバレ處ラレ仁
ニ、
焉クンゾ得ントレ知トスルヲ。
子曰、里仁爲美。擇不處仁、焉得知。
子曰はく、里は仁を美と爲す。擇んで仁に處らずんば、焉くんぞ知とするを得んと。
(
2)
子曰
ハク、
不仁者ハ、不
レ可カラ二以
テ久
シク處ル一レ約ニ、不
レ可
カラ二以
テ長ク處
ル一レ樂ニ。仁者
ハ安ンジレ仁
ニ、知者
ハ利ストレ仁
ヲ。
子曰、不仁者、不可以久處約、不可以長處樂。仁者安仁、知者利仁。
子曰はく、不仁者は、以て久しく約に處るべからず、以て長く樂に處るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利すと。
(
3)
子曰
ハク、
惟ダ仁者ノミ能ク好ミレ人
ヲ、能
ク惡ムトレ人
ヲ。
子曰、惟仁者能好人、能惡人。
子曰はく、惟だ仁者のみ能く人を好み、能く人を惡むと。
(
4)
子曰
ハク、
苟クモ志セバ二於
仁ニ一矣、無
シレ惡也
ト。
子曰、苟志於仁矣、無惡也。
子曰はく、苟くも於仁に志せば、惡無し也と。
(
5)
子曰
ハク、
富ト與ハレ貴、
是レ人
ノ之所
ナリレ欲スル也。不
シテレ以テセ二其
ノ道
ヲ一得レバレ之ヲ、
不ルナリレ處ラ也。
貧ト與
ハレ賤、是
レ人
ノ之所
ナリレ惡ム也。不
シテレ以
テセ二其
ノ道
ヲ一得
レバレ之
ヲ、不
ルナリレ去ラ也。
君子去
ラバレ仁ヲ、
惡クニカ乎
成サンレ名
ヲ。君子
ハ無
シ二終フルレ食ヲ之
間モ違フコト一レ仁
ニ。
造次ニモ必
ズ於テシレ是ニ、
顚沛ニモ必
ズ於
テストレ是
ニ。
子曰、富與貴、是人之所欲也。不以其道得之、不處也。貧與賤、是人之所惡也。不以其道得之、不去也。君子去仁、惡乎成名。君子無終食之間違仁。造次必於是、顚沛必於是。
子曰はく、富と貴とは、是れ人の欲する所なり。其の道を以てせずして之を得れば、處らざるなり。貧と賤は、是れ人の惡む所なり。其の道を以てせずして之を得れば、去らざるなり。君子仁を去らば、惡くにか名を成さん。君子は食を終ふる間も仁に違ふこと無し。造次にも必ず是に於てし、顚沛にも必ず是に於てすと。
(
6)
子曰
ハク、我
ハ未ダレ見
下好
ムレ仁ヲ者、
惡ム二不仁ヲ一者
ヲ上。好
ムレ仁
ヲ者
ハ、無
シ二以
テ尚フルコト一レ之
ニ。惡
ム二不仁
ヲ一者
ハ、其
ノ爲スヤレ仁
ヲ矣、不
レ使メ三不仁
ナル者
ヲシテ加
ハラ二其
ノ身
ニ一。有
ランカ三能ク一日用フルコト二其ノ力
ヲ於仁
ニ一矣乎、我
ハ未
ダレ見
二力
ノ不
ルレ足
ラ者
ヲ一。
蓋シ有
ランモレ之矣、我
ハ未
ダルナリ 二之
ヲ見
一也
ト。
子曰、我未見好仁者、惡不仁者。好仁者、無以尚之。惡不仁者、其爲仁矣、不使不仁者加其身。有能一日用其力於仁矣乎、我未見力不足者。蓋有之矣、我未之見也。
子曰はく、我は未だ仁を好む者、不仁を惡む者を見ず。仁を好む者は、以て之に尚ふること無し。不仁を惡む者は、其の仁を爲すや、不仁なる者をして其の身に加はらしめず。能く一日其の力を仁に用ふること有らんか、我は未だ力の足らざる者を見ず。蓋し之有らんも、我は未だ之を見ざるなりと。
(
7)
子曰
ハク、人
ノ之
過チヤ也、
各〻於テス二其
ノ黨ニ一。
觀テレ過
チヲ、
斯ニ知
ルレ仁ヲ矣
ト。
子曰、人之過也、各於其黨。觀過、斯知仁矣。
子曰はく、人の過ちや、各〻其の黨に於てす。過ちを觀て、斯に仁を知ると。
(
8)
子曰
ハク、
朝ニ聞
カバレ道
ヲ、
夕ベニ死
ストモ可ナリ矣
ト。
子曰、朝聞道、夕死可矣。
子曰はく、朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なりと。
(
9)
子曰
ハク、
士志
シテ二於道
ニ一、而
恥ヅル二惡衣惡食ヲ一者
ハ、未
ダレ足
ラ二與ニ議スルニ一也
ト。
子曰、士志於道、而恥惡衣惡食者、未足與議也。
子曰はく、士道に志して、惡衣惡食を恥づる者は、未だ與に議するに足らずと。
(
10)
子曰
ハク、君子
ノ之於
ケルヤ二天下
ニ一也、無
クレ適フコト也、無
クレ莫ムコト也、
義ト之
與ニ比ブト。
子曰、君子之於天下也、無適也、無莫也、義之與比。
子曰はく、君子の天下に於けるや、適ふこと無く、莫むこと無く、義と之與に比ぶと。
(
11)
子曰
ハク、君子
ハ懷ヒレコ
ヲ、
小人ハ懷
フレ土ヲ。君子
ハ懷
ヒレ刑ヲ、小人
ハ懷
フトレ惠ヲ。
子曰、君子懷コ、小人懷土。君子懷刑、小人懷惠。
子曰はく、君子はコを懷ひ、小人は土を懷ふ。君子は刑を懷ひ、小人は惠を懷ふと。
(
12)
子曰
ハク、
放リテ二於
利ニ一而
行ヘバ、多
シトレ怨ミ。
子曰、放於利而行、多怨。
子曰はく、利に放りて行へば、怨み多しと。
(
13)
子曰
ハク、
能ク以
テ二禮讓ヲ一爲メンカレ國ヲ乎、
何カ有ラン。不ンバ下能
ク以
テ二禮讓
ヲ一爲
メ上レ國
ヲ、
如レ禮
ヲ何セント。
子曰、能以禮讓爲國乎、何有。不能以禮讓爲國、如禮何。
子曰はく、能く禮讓を以て國を爲めんか、何か有らん。能く禮讓を以て國を爲めずんば、禮を如何せんと。
(
14)
子曰
ハク、不
レ患ヘレ無
キヲレ位、患
フ三所-二以ヲ立
ツ一。不
レ患
ヘレ莫キヲ二己ヲ知
ルモノ一、求
ムレ爲スヲレ可キヲレ知
ラル也
ト。
子曰、不患無位、患所以立。不患莫己知、求爲可知也。
子曰はく、位無きを患へず、立つ所以を患ふ。己を知るもの莫きを患へず、知らるべきを爲すを求むと。
(
15)
子曰
ハク、
參ヤ乎、
吾ガ道
ハ一以
テ貫
クトレ之
ヲ。
曾子曰
ク、
唯ト。子
出ヅ。門人問
ウテ曰
ク、
何ノ謂ヒゾヤ也
ト。曾子曰
ク、
夫子ノ之道
ハ、
忠恕ノミ而已矣
ト。
子曰、參乎、吾道一以貫之。曾子曰、唯。子出。門人問曰、何謂也。曾子曰、夫子之道、忠恕而已矣。
子曰はく、參や、吾が道は一以て之を貫くと。曾子曰く、唯と。子出づ。門人問うて曰く、何の謂ひぞやと。曾子曰く、夫子の道は、忠恕のみと。
(
16)
子曰
ハク、君子
ハ喩ル二於
義ニ一。
小人ハ喩
ルト二於
利ニ一。
子曰、君子喩於義。小人喩於利。
子曰はく、君子は義に喩る。小人は利に喩ると。
(
17)
子曰
ハク、見
テハレ賢ヲ思
ヒレ齊シカラント焉、見
テハ二不賢ヲ一而
内ニ自省ス也
ト。
子曰、見賢思齊焉、見不賢而内自省也。
子曰はく、賢を見ては齊しからんと思ひ、不賢を見ては内に自省すと。
(
18)
子曰
ハク、
事ヘテハ二父母ニ一幾諫ス。見
テハ二志ノ不
ルヲ一レ從ハ、又
敬シテ不
レ違ハ、
勞スレド而不
トレ怨ミ。
子曰、事父母幾諫。見志不從、又敬不違、勞而不怨。
子曰はく、父母に事へては幾諫す。志の從はざるを見ては、又敬して違はず、勞すれど怨みずと。
(
19)
子曰
ハク、父母
在セバ、不
二遠遊セ一。
遊ブニ必
ズ有
リトレ方。
子曰、父母在、不遠遊。遊必有方。
子曰はく、父母在せば、遠遊せず。遊ぶに必ず方有りと。
(
20)
子曰
ハク、三年無
ケレバレ改ムル二於
父ノ之道
ヲ一、
可シレ謂フレ孝ト矣
ト。
子曰、三年無改於父之道、可謂孝矣。
子曰はく、三年父の道を改むる無ければ、孝と謂ふべしと。
(
21)
子曰
ハク、父母
ノ之
年ハ不
レ可カラレ不
ルレ知
ラ也。
一ハ則チ以
テ喜
ビ、一
ハ則
チ以
テ懼ルト。
子曰、父母之年不可不知也。一則以喜、一則以懼。
子曰はく、父母の年は知らざるべからず。一は則ち以て喜び、一は則ち以て懼ると。
(
22)
子曰
ハク、
古者言ヲ之不
ルハレ出ダサ、
恥ヅルナリ二躬ノ之不
ルヲ一レ逮バ也
ト。
子曰、古者言之不出、恥躬之不逮也。
子曰はく、古者言を之出ださざるは、躬の逮ばざるを恥づるなりと。
(
23)
子曰
ハク、以
テレ約マヤカナルヲ失
フレ之
ヲ者
ハ鮮シ矣
ト。
子曰、以約失之者鮮矣。
子曰はく、約まやかなるを以て之を失ふ者は鮮しと。
(
24)
子曰
ハク、君子
ハ欲スト下訥クトモ二於
言ニ一、而
敏カラント中於
行ヒニ上。
子曰、君子欲訥於言、而敏於行。
子曰はく、君子は言に訥くとも、行ひに敏からんと欲すと。
(
25)
子曰
ハク、
コハ不
レ孤リナラ、必
ズ有
リトレ鄰リ。
子曰、コ不孤、必有鄰。
子曰はく、コは孤りならず、必ず鄰り有りと。
(
26)
子游曰
ク、
事ヘテレ君
ニ數ムレバ、
斯ニ辱メラレ矣、
朋友ヲ數
ムレバ、斯
ニ疏ンゼラル矣
ト。
子游曰、事君數、斯辱矣、朋友數、斯疏矣。
子游曰く、君に事へて數むれば、斯に辱められ、朋友を數むれば、斯に疏んぜらると。
(本文はtaiju生作「漢文エディタ」原文よりHTMLに変換したものである。原文は後日利用の便を考えて、このファイルに含めてある。又、上下のコラムを連動させるスクリプトも入っている。)