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2020.02.29

群居終日、言不及義、好行小慧。難矣哉。(『論語』衞靈公篇)

 「群居終日、言不及義、好行小慧。難矣哉。(群居して日を終ふるも、言(げん)義に及ばず、好んで小慧(せうけい)を行ふ。難(かた)いかな。〔『論語』衞靈公篇〕)というところまで入力した。失言問題の追及と擁護に日を終えるまで喋喋喃喃(ちょうちょうなんなん)としている与党も野党も、議論の本筋を忘却して恥じることがない。喫緊(きっきん)の課題がいくらでもあるだろうのに。帷帳(いちょう)の中(うち)に群居する姿勢そのものが問われているのではないのかと思う。1/4万年前の状況そのままを彼らは眼の前に再現してくれている。閏年の記念の意味も兼ねて、そそくさと書いた。この社会は末端が支えているから、崩壊しないでいるのだ。忘れてはいけない。 〔これに前回の補足を追記した。〕

 〔3.2追記〕 見出しの文言について補足することは何もないが、この間の「德」に関してよい補足があったので、書き足しておく。

 その前に『論語』第16「季氏編」の入力にさしかかって、これまでと文体に明らかな相違のあることに気づいた。『論語』には、古論、魯論、斉論などの古い版があり、またさらに古くは掌編の集合であったのではないかと言われる。それらが統合されて現在の20巻本に至ったそうである。天下の古典だから、異論を唱える人はあっても、大方は現行本文を尊重して議論を始めている。それが謙虚で良いと思うけれども、文体というものは体臭のようなもので、「文は人なり。」ではないが、あまり異なるものはいくら「本文(ほんもん)」に組み込まれていても、やはり「胡散臭い」感じは拭えない。「季氏編」の本文は、一二を除いて孔子の言葉の記録ではないのではあるまいか。素人の強み、ブログの気軽さの強みから、こう断言して憚らない。

 篇の冒頭は措いて、その一二拾ったのは、末尾から三四つめ辺りの二章である。曰く、「隱居以求其志、行義以達其道。吾聞其語矣、未見其人也。(「隱居して以て其の志を求め、義を行つて以て其の志を達す」と。吾其の語を聞けども、未だ其の人を見ず。〔『論語』季氏篇〕)、「齊景公有馬千駟、死之日、民無德而稱焉。伯夷・叔齊餓于首陽之下、民到于今稱之。(齊の景公は馬千駟有れども、死する日、民の德として稱するもの無し。伯夷・叔齊は首陽の下に餓うれども、民今に到るまで之を稱す。〔同前〕)これは、「馬千駟」が「德」の最も分かりやすい形であったことを示している。伯夷・叔齊の「德」がこれに対置されている。これも、前に指摘した「知德者鮮矣。」のヴァリエーションであり、同じ表現方法をとっていると言っていい。これらは、まちがいなく孔子の文体だ。他の列挙や空疎な言葉の重複を「小人は聖人の言を侮る。」式の文言は、戦国時代か漢代の誰かのものが当時の世俗的権威を負って、編集の際に紛れ込んだのだろう。言葉の生き死にに、孔子は敏感な人であったはずである。

 「馬千駟」の人は、今もいくらもあるだろう。「隱居の人」は、これからどう振る舞って行ったものか。ありがたいことに、先の隱居の章には前段があり、中距離目標を挙げてくれている。「見善如不及、見不善如探湯。吾見其人矣。吾聞其語矣。」(「善を見ては及ばざるがごとくし、不善を見ては湯を探るがごとくす」と。吾其の人を見る。吾其の語を聞く。〔同前〕)この「及ばざるが如くす」の意味は、いくら頑張っても追い付けない感じをいうらしい。これ自体が里程標にもなりえないことを意味するのであれば、実際の振る舞いとしては「如不及」しか残されていないことになる。「如不及。」でも、「猶恐失之。(猶ほ之を失はんことを恐る。〔『論語』泰伯篇〕)がすなわち儒学の「」であった。自分のごときは、まず「不善を見ては湯を探るがごとくす」る感性を忘れないようにしたい。「堪ったものではない」感じは、冷たい場合にも成り立つことと思う。今のマスクから始まって、衛生材からトイレットペーパー、米に至る日用品の買い占めと横流し、途方もない高額での「転売」の横行に、心も冷え冷えと顔を顰めている人はまだ少くない。しかし、古の15歳の青年に、憧れるだけのためにも、古典の学びを欠いてはならない。

 

 

 

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