（1）　子曰（のたま）^ハク、爲（な）^スニ_レ政（まつりごと）^ヲ以（もつ）^テスレバ_レ德^ヲ、譬（たと）^ヘバ如（ごと）^シト_下北辰（ほくしん）^ノ居（ゐ）^テ_二其（そ）^ノ所^ニ_一、而衆星（しゆうせい）^ノ共（むか）^フガ_上レ之（これ）^ニ。

子曰、爲政以德、譬如北辰居其所、而衆星共之。

子曰はく、政を爲すに德を以てすれば、譬へば北辰の其の所に居て、衆星の之に共ふがごとしと。

（2）　子曰^ハク、詩三百、一言（いちげん）以^テ蔽（おほ）^ヘバ_レ之^ヲ、曰^ク、思^ヒ無^シト_レ邪（よこしま）。

子曰、詩三百、一言以蔽之、曰、思無邪。

子曰はく、詩三百、一言以て之を蔽へば、曰く、思ひ邪無しと。

（3）　子曰^ハク、道（みちび）^クニ_レ之^ヲ以^テシ_レ政（せい）^ヲ、齊（とゝの）^フルニ_レ之^ヲ以^テスレバ_レ刑^ヲ、民免（まぬか）^レテ而無^シ_レ恥（はぢ）。道^クニ_レ之^ヲ以^テシ_レ德^ヲ、齊^フルニ_レ之^ヲ以^テスレバ_レ禮（れい）^ヲ、有^リト_二恥^ヂテ且（か）^ツ格（いた）^ル_一。

子曰、道之以政、齊之以刑、民免而無恥。道之以德、齊之以禮、有恥且格。

子曰はく、之を道くに政を以てし、之を齊ふるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。之を道くに德を以てし、之を齊ふるに禮を以てすれば、恥ぢて且つ格る有りと。

（4）　子曰^ハク、吾十有五（じふいうご）^ニシテ而志（こゝろざ）^ス_二于學（がく）^ニ_一。三十^ニシテ而立^ツ。四十（しじふ）^ニシテ而不_レ惑（まど）^ハ。五十^ニシテ而知^ル_二天命（てんめい）^ヲ_一。六十^ニシテ而耳順（したが）^フ。七十（しちじふ）^ニシテ而從（したが）^ヒテ_二心^ノ所^ニ_一レ欲（ほつ）^スル、不^ト_レ踰（こ）^ヘ_レ矩（のり）^ヲ。

子曰、吾十有五而志于學。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而從心所欲、不踰矩。

子曰はく、吾十有五にして學に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に從ひて、矩を踰へずと。

（5）　孟懿子（まういし）問^フ_レ孝（かう）^ヲ。子曰^ハク、無^カレト_レ違（たが）^フコト。樊遲（はんち）御（ぎよ）^タリ。子告^ゲテ_レ之^ニ曰^ハク、孟孫（まうそん）問^フ_二孝^ヲ於我^ニ_一。我對（こた）^ヘテ曰^ク、無^カレト_レ違^フコト。樊遲曰^ク、何（なん）^ノ謂（い）^ヒゾヤ也^ト。子曰^ハク、生^キテハ事（つか）^フルニ_レ之^ニ以^テシ_レ禮（れい）^ヲ、死^シテハ葬^ルニ_レ之^ヲ以^テシ_レ禮^ヲ、祭^ルニ_レ之^ヲ以^テスト_レ禮^ヲ。

孟懿子問孝。子曰、無違。樊遲御。子告之曰、孟孫問孝於我。我對曰、無違。樊遲曰、何謂也。子曰、生事之以禮、死葬之以禮、祭之以禮。

孟懿子孝を問ふ。子曰はく、違ふこと無かれと。樊遲御たり。子之に告げて曰はく、孟孫孝を我に問ふ。我對へて曰く、違ふこと無かれと。樊遲曰く、何の謂ひぞやと。子曰はく、生きては之に事ふるに禮を以てし、死しては之を葬るに禮を以てし、之を祭るに禮を以てすと。

（6）　孟武伯（まうぶはく）問^フ_レ孝^ヲ。子曰^ハク、父母^ハ唯（たゞ）其^ノ疾（やまひ）^ヲ之憂（うれ）^フノミト。

孟武伯問孝。子曰、父母唯其疾之憂。

孟武伯孝を問ふ。子曰はく、父母は唯其の疾を之憂ふのみと。

（7）　子游（しいう）問^フ_レ孝^ヲ。子曰^ハク、今^ノ之孝^ハ者、是（これ）謂^フ_二能（よ）^ク養^フヲ_一。至^ルマデ_二於犬馬（けんば）^ニ_一、皆能^ク有^リ_レ養^フ。不（ず）^ンバ_レ敬（けい）^セ、何（なに）^ヲ以（もつ）^テ別（わか）^タンヤ乎^ト。

子游問孝。子曰、今之孝者、是謂能養。至於犬馬、皆能有養。不敬、何以別乎。

子游孝を問ふ。子曰はく、今の孝は、是能く養ふを謂ふ。犬馬に至るまで、皆能く養ふ有り。敬せずんば、何を以て別たんやと。

（8）　子夏（しか）問^フ_レ孝^ヲ。子曰^ハク、色難（かた）^シ。有^レバ_レ事、弟子（ていし）服（ふく）^シ_二其^ノ勞（らう）^ニ_一、有^レバ_二酒食（しゆしよく）_一、先生饌（せん）^ス。曾（かつ）^テ是（これ）^ヲ以^テ爲（な）^サンヤ_レ孝^ト乎^ト。

子夏（しか）問^フ_レ孝^ヲ。子曰^ハク、色難（かた）^シ。有^レバ_レ事、弟子（ていし）服（ふく）^シ_二其^ノ勞（らう）^ニ_一、有^レバ_二酒食（しゆしよく）_一、先生饌（せん）^ス。曾（かつ）^テ是（これ）^ヲ以^テ爲（な）^サンヤ_レ孝^ト乎^ト。

子夏孝を問ふ。子曰はく、色難し。事有れば、弟子其の勞に服し、酒食有れば、先生饌す。曾て是を以て孝と爲さんやと。

（9）　子曰^ハク、吾與（と）_レ囘（くわい）言^フコト終日（しゆうじつ）、不^ルコト_レ違（たが）^ハ如（ごと）^シ_レ愚（ぐ）^ナルガ。退（しりぞ）^キテ而省（かへり）^ミレバ_二其^ノ私（わたくし）^ヲ_一、亦（また）足^レリ_二以^テ發（はつ）^スルニ_一。囘^ヤ也不^ト_レ愚^ナラ。

子曰、吾與囘言終日、不違如愚。退而省其私、亦足以發。囘也不愚。

子曰はく、吾囘と言ふこと終日、違はざること愚なるがごとし。退きて其の私を省みれば、亦以て發するに足れり。囘や愚ならずと。

（10）　子曰^ハク、視（み）_二其^ノ所^ヲ_一レ以（な）^ス、觀（み）_二其^ノ所^ヲ_一レ由（よ）^ル、察^スレバ_二其^ノ所^ヲ_一レ安（やす）^ンズル、人焉（いづ）^クンゾ痩（かく）^サンヤ哉、人焉^クンゾ痩^サンヤ哉^ト。

子曰、視其所以、觀其所由、察其所安、人焉痩哉、人焉痩哉。

子曰はく、其の以す所を視、其の由る所を觀、其の安んずる所を察すれば、人焉くんぞ痩さんや、人焉くんぞ痩さんやと。

（11）　子曰^ハク、温（あたゝ）^メテ_レ故（ふる）^キヲ而知^レバ_レ新^シキヲ、可（べ）^シ_二以^テ爲（た）^ル_一レ師矣^ト。

子曰、温故而知新、可以爲師矣。

子曰はく、故きを温めて新しきを知れば、以て師たるべしと。

（12）　子曰^ハク、君子（くんし）^ハ不^ト_レ器（き）^ナラ。

子曰、君子不器。

子曰はく、君子は器ならずと。

（13）　子貢（しこう）問^フ_二君子（くんし）^ヲ_一。子曰^ハク、先（ま）^ヅ行^ウテ_二其^ノ言^ヲ_一、而（しか）^ル後（のち）^ニ從（したが）^フト_レ之^ニ。

子貢問君子。子曰、先行其言、而後從之。

子貢君子を問ふ。子曰はく、先づ其の言を行うて、而る後に之に從ふと。

（14）　子曰^ハク、君子^ハ周（しう）^シテ而不_レ比（ひ）^セ。小人（せうじん）^ハ比^シテ而不^ト_レ周^セ。

子曰、君子周而不比。小人比而不周。

子曰はく、君子は周して比せず。小人は比して周せずと。

（15）　子曰^ハク、學^ンデ而不^レバ_レ思^ハ則（すなは）^チ罔（くら）^ク、思^ウテ而不^レバ_レ學^バ則^チ殆（あやふ）^シト。

子曰、學而不思則罔、思而不學則殆。

子曰はく、學んで而思はざれば則ち罔く、思うて學ばざれば則ち殆しと。

（16）　子曰^ハク、攻（をさ）^ムルハ_二乎異端（いたん）^ヲ_一、斯（こ）^レ害（そこな）^フノミ也已^ト。

子曰、攻乎異端、斯害也已。

子曰はく、異端を攻むるは、斯れ害ふのみと。

（17）　子曰^ハク、由（いう）^ヨ、誨（をし）^ヘンカ_二女（なんぢ）^ニ知^ルヲ_一レ之^ヲ乎。知^ルヲ_レ之^ヲ爲（な）^シ_レ知^ルト_レ之^ヲ、不^ルヲ_レ知^ラ爲^ス_レ不^ト_レ知^ラ、是（こ）^レ知^ルナリ也^ト。

子曰、由、誨女知之乎。知之爲知之、不知爲不知、是知也。

子曰はく、由よ、女に之を知るを誨へんか。之を知るを之を知ると爲し、知らざるを知らずと爲す、是れ知るなりと。

（18）　子張（しちやう）學^ブ_レ于（もと）^ムルヲ_レ祿（ろく）^ヲ。子曰^ハク、多^ク聞^キテ闕（か）^キ_レ疑^ハシキヲ、愼（つゝし）^ンデ言^ヘバ_二其^ノ餘（よ）^ヲ_一、則^チ寡（すくな）^シ_レ尤（とが）^メ。多^ク見^テ闕^キ_レ殆（あやふ）^キヲ、愼^ミテ行^ヘバ_二其^ノ餘^ヲ_一、則^チ寡^シ_レ悔（く）^ユルコト。言（げん）寡^ク_レ尤^メ、行^ヒ寡^ケレバ_レ悔^ユルコト、祿^ハ在^リ_二其^ノ中（うち）^ニ_一矣^ト。

子張學于祿。子曰、多聞闕疑、愼言其餘、則寡尤。多見闕殆、愼行其餘、則寡悔。言寡尤、行寡悔、祿在其中矣。

子張祿をむるを學ぶ。子曰はく、多く聞きて疑はしきを闕き、愼んで其の餘を言へば、則ち尤め寡し。多く見て殆きを闕き、愼みて其の餘を行へば、則ち悔ゆること寡し。言尤め寡く、行ひ悔ゆること寡ければ、祿は其の中に在りと。

（19）　哀公（あいこう）問^ウテ曰^ク、何爲（いかん）^セバ則^チ民服^セント。孔子對^ヘテ曰^ク、擧^ゲテ_レ直^キヲ錯（や）^メバ_二諸（もろ）^〻^ノ枉（まが）^レルヲ_一、則^チ民（たみ）服^セン。擧^ゲテ_レ枉^レルヲ錯^メバ_二諸^〻^ノ直^キヲ_一、則^チ民不^ト_レ服^セ。

哀公問曰、何爲則民服。孔子對曰、擧直錯諸枉、則民服。擧枉錯諸直、則民不服。

哀公問うて曰く、何爲せば則ち民服せんと。孔子對へて曰く、直きを擧げて諸^〻の枉れるを錯めば、則ち民服せん。枉れるを擧げて諸^〻の直きを錯めば、則ち民服せずと。

（20）　季康子（きかうし）問^フ、使（し）^メンコト_二民^ヲシテ敬忠（けいちゆう）^ニシテ以^テ勸（つと）^メ_一、如（い）_レ之^ヲ何（かん）^セント。子曰^ク、臨^ムニ_レ之^ニ以^テスレバ_レ莊（さう）^ヲ則^チ敬^セン、孝慈（かうじ）^ナレバ則^チ忠^ナラン、擧^ゲテ_レ善^ヲ而敎^フレバ_二不能（ふのう）^ヲ_一則^チ勸^メント。

季康子問、使民敬忠以勸、如之何。子曰、臨之以莊則敬、孝慈則忠、擧善而敎不能則勸。

季康子問ふ、民をして敬忠にして以て勸めしめんこと、之を如何せんと。子曰く、之に臨むに莊を以てすれば則ち敬せん、孝慈なれば則ち忠ならん、善を擧げて不能を敎ふれば則ち勸めんと。

（21）　或（ある）^ヒト謂（い）^ヒテ_二孔子^ニ_一曰^ク、子奚（なん）^ゾ不^ルト_レ爲（な）^サ_レ政（まつりごと）^ヲ。子曰^ク、書^ニ云（い）^ヘルカ_レ孝^ヲ乎。惟（こ）^レ孝^ハ友（いう）^ニ_二于兄弟（けいてい）^ニ_一、施（ほどこ）^スト_二於有^ルニ_一レ政。是^レ亦（また）爲^ス_レ政^ヲ。奚^ゾ其^レ爲^サント_レ爲^スヲ_レ政^ヲ。

或謂孔子曰、子奚不爲政。子曰、書云孝乎。惟孝友于兄弟、施於有政。是亦爲政。奚其爲爲政。

或ひと孔子に謂ひて曰く、子奚ぞ政を爲さざると。子曰く、書に孝を云へるか。惟れ孝は兄弟に友に、政有るに施すと。是れ亦政を爲す。奚ぞ其れ政を爲すを爲さんと。

（22）　子曰^ハク、人^ニシテ而無^クバ_レ信、不_レ知^ラ_二其^ノ可（か）^ナルヲ_一也。大車（たいしや）無^ク_レ輗（げい）、小車無^クバ_レ軏（げつ）、其^レ何（なに）^ヲ以（もつ）^テ行（や）^ランヤ_レ之^ヲ哉^ト。

子曰、人而無信、不知其可也。大車無輗、小車無軏、其何以行之哉。

子曰はく、人にして信無くば、其の可なるを知らず。大車輗無く、小車軏無くば、其れ何を以て之を行らんやと。

（23）　子張問^フ。十世（じつせい）可（べ）^キカ_レ知^ル也^ト。子曰^ハク、殷（いん）^ハ因（よ）^ル_二於夏（か）^ノ禮^ニ_一。所_二損益（そんえき）^スル_一可^シ_レ知^ル也。周（しう）^ハ因^ル_二於殷^ノ禮^ニ_一。所_二損益^スル_一可^シ_レ知^ル也。其^レ或（あるい）^ハ繼（つ）^ガン_レ周^ニ者^ハ、雖（いへど）^モ_二百世（ひやくせい）^ト_一可^シ_レ知^ル也^ト。

子張問。十世可知也。子曰、殷因於夏禮。所損益可知也。周因於殷禮。所損益可知也。其或繼周者、雖百世可知也。

子張問ふ。十世知るべきか也と。子曰はく、殷は夏の禮に因る。損益する所知るべし。周は殷の禮に因る。損益する所知るべし。其れ或は周に繼がん者は、百世と雖も知るべし也と。

（24）　子曰^ハク、非（あら）^ズシテ_二其^ノ鬼（き）^ニ_一而祭^ルハ_レ之^ヲ、諂（へつら）^フナリ也。見^テ_レ義^ヲ不^ルハ_レ爲（な）^サ、無^キナリ_レ勇（ゆう）也。

子曰、非其鬼而祭之、諂也。見義不爲、無勇也。

子曰はく、其の鬼に非ずして之を祭るは、諂ふなり。義を見て爲さざるは、勇無きなり。